第1回事保連シンポジウム開催

一般社団法人 日本事業所内保育団体連合会主催の「第1回事保連シンポジウム」が、7月29日、東京大手町ファーストスクエアカンファレンスにて開かれました。当日は保育所を運営する事業者や保育士など88名の方々に参加いただきました。

概要

平成30年現在、幼稚園に通う児童は127万人に対して、保育所に通う児童は約255万人を超えました。社会の変化に伴い、保育所が担う社会的役割は年々大きくなってきていると言えます。保育所の一翼を担う事業所内保育は、2015年施行の地域型事業所内保育に加えて、内閣府の企業主導型なども加わり急激に増加してきている一方で、保育の質が担保されているのかを疑問視される意見もあります。本シンポジウムでは、保育所を運営する事業者と保育士が集まり、事業者の考え、保育士の日頃の活動報告、有識者の意見などを持ち寄り、より良い保育のあり方を学ぶ場として、今後の保育業界の在り方を探りました。

  • テーマ :保育業界の未来
  • 主 催 :一般社団法人 日本事業所内保育団体連合会
  • 日 時 :2018年7月29日(日) 13:30〜16:15(13:15開場)
  • 場 所 :東京都千代田区大手町 1-5-1 ファーストスクエア イーストタワー2F
  • 参加者 :88名
  • 参加費 :無料 ※交流会参加者のみ1名1,000円(税込)

プログラム

  • 13:15 開場
  • 13:30 開会の挨拶
  • 13:35 第一基調講演 浅野 大介 氏 「学びと社会が連携した新たな教育」
  • 14:00 第二基調講演 開 一夫 教授「赤ちゃんの不思議な力」
  • 14:30 事例報告「株式会社ビックカメラ×株式会社日本福祉総合研究所」
  • 14:45 日本社会福祉マネジメント学会 設立宣言
  • 15:00 休憩
  • 15:15 パネルディスカッション テーマ「保育業界の未来」
  • 石川 和男 氏 (社会保障経済研究所)
    浅野 大介 氏 (経済産業省)
    開 一夫 教授 (東京大学大学院)
    加藤 夏希 さん (タレント・保育所を利用する一児の母)
    諸我 忠明 氏 (株式会社日本福祉総合研究所 開発部部長 兼 広報部部長)
  • 16:00 質疑応答
  • 16:15 閉会の挨拶
  • 16:30 パネリストによる交流会
  • 17:30 交流会閉会

開催レポート
レポート① 第一基調講演「学びと社会が連携した新たな教育」

浅野大介 氏 (経済産業省教育産業室長)

経済産業省が中心になって進める「未来の教室」実証事業について、現在の日本を「課題先進国」から「課題”解決”先進国」とするために必要な人材(チェンジメーカー)を育てるというテーマでお話をいただきました。

現在の多くの日本人が、「ルールは従うもの」だと心の底から信じていますが、本来は「ルールは作るもの」であり「ルールは変えられるもの」であり、そのために人はいろいろな手段をつくすべきだと主張します。それでは「ルールは作るもの」と言える人材をどう育てればいいのか?そういう教育をどうつくればいいのか?その条件として「真ん中にワクワクするものがあること」と浅野氏は言います。特に幼児期は子どもであっても彼らの社会の中で生きている「社会人」であり、遊びの中のルール作りや遊びの中での創意工夫が、彼らにとっても「探求プロジェクト」となり、それは「ルールを作る」人材の基礎になると解説しています。

「未来の教室」ワークショップの中で浮かび上がったチェンジメーカーとして必要な資質をまとめたうえで、自身の学びの経験と併せてチェンジメーカーを育てる環境を「教室を科学する」という言葉の中で説明をしています。

従来の教科学習だけでないスポーツや音楽、アート、地域の社会課題や先端技術の課題から身近な生活課題まで含めた「マイ・プロジェクト」の実施によって子どもの「学びの生産性を上げる」ことの意味を解説し、課題を発見し解決する創造性と幼児教育におけるこれらの対応の重要性を強調されていました。

レポート② 第二基調講演「赤ちゃんの不思議な力」

開 一夫 教授 (東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系教授

赤ちゃん研究の第一人者として活躍されている開教授に、子どもの社会・情動的スキル(非認知スキル)に関するいくつかの先行研究事例をビデオやスライドをもとに解説していただきました。

子ども(赤ちゃん)の考えていることは実際に子どもに聞いても子どもは答えてくれません。子どもの社会・情動的スキル(非認知スキル)をどの様に計測し、解釈するかは非常に重要なテーマとなっています。

そこで「注視時間」という指標や脳波計の計測結果を用いてコミュニケーションや共感、学びに関するこどもの生得的能力を、「今性」と「応答性」という言葉を使い、保護者と子どもの実験の様子を写したビデオや計測されたデータから作成したグラフを用いながら説明をしました。

また、近年非常に高性能となった各種のセンサー(感知器)などを使用について、さまざまな情報を計測・数値化するセンシング技術が今後の子どもの社会・情動的スキル(非認知スキル)の測定と個別適用への応用に非常に重要となることを説明していただきました。

レポート③ 事例報告「ビックカメラ×日本福祉総合研究所」

根本 奈智香 部長 (株式会社ビックカメラ執行役員人事部担当部長兼ダイバーシティ推進室室長)
諸我 忠明 部長(株式会社日本福祉総合研究所 開発部部長 兼 広報部部長)

諸我(もろが)部長と保育園の設置主体であるビックカメラ根本部長からそれぞれお話をいただきました。

まず、日本福祉総合研究所の諸我部長のパートでは、ビックカメラから開園に関する問合せがあった時の様子を語っていただきました。当時、開園までの期間が短いことや池袋という立地からくる採用等の問題があったことのこと。社内でも運営業務を受託するかどうかについて多くの議論があったそうです。しかし、お互いが話をするなかでビックカメラの社風を知り、従業員や保育園に対する思いを受けて、「大切な従業員の子どもを預かる保育園を一緒につくる」ことを最終的な経営判断として決定しました。最後に認可保育所も事業所内保育所も同じ「保育の場」であり、事業者と企業がチームとなり「子どもにとって最善の場」となる保育所が一つでも増えることを願っているという言葉で結んでいただきました。

続いてビックカメラ根本部長のパートでは、「お客様喜ばせ業」という考え方からくる現場第一主義(現場に一番近い販売員の考えや感性を尊重する)という社風と、女性の能力を伸ばす場が多くアルバイト・パートから正社員まで女性が活躍し、その継続就業を願うという考えから、池袋に保育園を作るという決断に至ったという話をしていただきました。このときビックカメラには「預けるだけの託児所ではなく子どもの成長の場にしたい」という強い思いがありました。そして運営会社を決めるにあたってどろんこ保育園を見学し、日本福祉総合研究所の「にんげん力を育てる」という保育理念を肌で感じ、ビックカメラの社風・文化と通じることが決定だとなり日本福祉総合研究所とともに保育園を作ることが決まりました。両者は一緒に保育理念を作るなどの事前準備だけでなく、開園後についても毎日の巡回や定例会の実施など一緒に保育園を運営してくことをこころがけているそうです。

レポート④日本社会福祉マネジメント学会 設立宣言

佐藤 剛 氏(日本社会福祉マネジメント学会 学会長)

日本社会福祉マネジメント学会の紹介と設立の報告をしていただきました。詳細は日本社会福祉マネジメント学会サイトをご確認ください。
日本社会福祉マネジメント学会

レポート⑤ ポスター展示

  • 朽木 直哉さん 「フィンランドにおける保育士の専門性の向上の取り組み」
  • 渡邉 天海さん 「子どの有能感とは何か」
  • 小牟田 清美さん 「小学校と保育所の連携と接続のあり方」
  • 吉岡 有希子さん 「乳児の午睡に与える生活の要因」
  • 山本 宏美さん 「学習障害の方への就労支援の現状について」
  • 澁谷 拓吾さん 「日本とカンボジアにおける保育者(教師)の人間性の違いに関する研究」

レポート⑥ パネルディスカッション:テーマ「保育業界の未来」

パネリスト
浅野 大介 氏 (経済産業省)
開 一夫 教授 (東京大学大学院)
加藤 夏希さん (タレント・保育所を利用する一児の母)
諸我 忠明部長 (株式会社日本福祉総合研究所 開発部部長 兼 広報部部長)

本日最後のプログラムとして、産官学及び利用者というそれぞれの立場から「保育業界の未来」というテーマでディスカッションをしていただきました。モデレーターはテレビなど多方面で活躍の政策アナリストの石川和男氏です。

まず、経済産業省(官)から浅野氏の発言として、サービス業としての質の担保を業界全体としてどうするか、そのための保育士の能力開発をどう保障していくか、制度全体に対して業界に対してどう働きかけてどう自分達で制度を変えていくか、それを行政側がお手伝いしたいというお話をいただきました。

続いて東京大学大学院教授(学)の開教授から、テクノロジーに対する研究に対して嫌悪感をなくすような役割をしたいというお話と併せて、大学が変わることで保育・教育業界と連携していくことで様々なことが可能となり、より開かれた保育・教育界になると思うというお話をいただきました。

また、株式会社日本福祉総合研究所(産)の諸我部長からは、保育の質や保育所の活動を客観的に評価する指標の必要性と保育事業者としての覚悟の観点から、保護者のニーズと保育所における子どもの発達を保障する活動のバランスについて語っていただきました。また、事業者と事業者や国と事業者が直接対話できるような未来を期待しているとの言葉をいただきました。

最後に実際に保育所を利用されている(利用者)女優の加藤夏希さんからは、保護者間の関係(ママ友)や、モンスター化する保護者と保育者の関係性を保育者に寄りそう言葉で語っていただき、会場から多くの共感を得ていました。

最後にモデレーターの石川氏から、開かれた保育・保育業界となるために今回のように産官学及び利用者が一堂に会し、それぞれの意見を持ち寄ることで、その意見を共有し、ディスカッションするなかで未来の子どもたちの居場所を、より良いものにしていきましょうと結びの言葉をいただきました。

次回開催

第2回事保連シンポジウムは2019年2月24日(日)に関西大学梅田キャンパスで開催となっております。

動画レポート